英語の勉強って、正解が一つじゃないですよね。
参考書を読み込む人もいれば、ドラマを見まくる人もいる。アプリを使う人もいれば、独自のやり方を自分で編み出す人もいる。
このシリーズでは、そんな「人それぞれの英語学習法」を、実際に経験した方々から集めてご紹介しています。
今回紹介するのは、

旅して、間違えて、
聞き返すサバイバル学習法
何か聞いてるだけで、美味しそうですよね。
ご協力いただいたのは、クラウドソーシングサービスや知人の紹介など、さまざまなご縁でつながった方たち。
年齢も職業も英語レベルもバラバラですが、みなさん自分なりの工夫や失敗を経て、今の学習スタイルにたどり着いた方々です。
こんなやり方があるんだ・自分にも試せそう!そう感じてもらえる記事が、きっと一つはあるはずです。
あなたの英語学習のヒントになれば、うれしいです。
プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ペンネーム | ま〜さ |
| 性別 | 女性 |
| 年齢・職業 | 52歳・英会話講師 |
| 英語学習歴 | 20年以上 |
| 現在の英語レベル | 英検2級 |
| 英語を学ぶ目的・きっかけ | 英語を学ぶ目的は、試験のためではありませんでした。まだ見たことのない世界を自分の目で見てみたいと思い、カナダへワーキングホリデーに行くと決めたことがきっかけです。 |
旅先で人と話したい。現地で困った時に、自分で動けるようになりたい。そこにいる人たちと、自分の言葉でつながりたい。その思いが、私の新たな英語学習の出発点でした。
私の英語学習法:「旅して、間違えて、聞き返すサバイバル学習法」
完璧な英語より、伝えようとする力を育てる実践型の学習法です。
学習法の詳細
私の学習法を一言で言うなら、「旅の中で起きる困りごとを、そのまま英語の教材にしていく方法」です。
旅先では、道を聞く、バスや電車の乗り方を確認する、ホステルでチェックインする、カフェで注文する、空港でチケットや荷物について確認するなど、英語を使わなければ進めない場面が何度もあります。
そこで、聞き取れなかったら聞き返す。通じなかったら別の言い方に変える。相手が言い直してくれた表現を、そのまままねる。
わからないまま笑って流すのではなく、その場でもう一度確認する。この繰り返しで、少しずつ英語を覚えていきました。
ま~ささん当時はスマホも翻訳アプリもなく、紙の辞書や電子辞書も持ってはいましたが、実際の会話中に開くことはほとんどありませんでした。
必要だったのは、正しい英語を調べることよりも、今この場でどうにか伝えることでした。
きれいな文章でなくてもいい。単語だけでもいい。地図を指してもいい。表情やジェスチャーを使ってもいい。とにかく黙らずに、伝えようとすること。
聞き返すこと。相手の英語を英語のまま受け取り、状況や表情からイメージで理解しようとすること。
その積み重ねが、私の英語を少しずつ「知っている英語」から「使える英語」に変えていきました。
一日の学習時間・ルーティン
机に向かって「今日は何時間勉強する」と決めていたわけではありません。
基本的には、朝起きてから寝るまでがすべて英語の実践時間でした。
カナダではESLスクールに通いながら、ホームステイ先で生活していました。学校ではいろいろな国の友達と英語で話し、家に帰ればホストマザーや他の留学生との会話があります。
最初は自分の英語に自信がなく、積極的に自分から話しかけることはできませんでした。それでも、朝のあいさつ、食事中の会話、予定の確認、困った時の相談など、日常の中に英語を使う場面が自然にありました。
そして旅に出てからは、もう誰かに頼ることはできません。駅で行き先を確認する。宿でチェックインする。必要なものを買う。空港で手続きをする。
ホステルで出会った人たちと合流して、一緒にご飯を食べに行ったり、街歩きをしたりする。毎日どこかで、英語を使わなければいけない場面がありました。
ま~ささんわからなかった表現は、その場で聞き返す。相手が言い直してくれた言葉を、次の似た場面で使ってみる。通じなかったら別の言い方に変える。この繰り返しが、私にとっての毎日のルーティンでした。
使用教材・アプリ・ツール
私が旅をしていた2000年頃は、今のようなスマホや翻訳アプリはありませんでした。持っていたのは、ガイドブック、地図、紙の辞書、電子辞書くらいです。
ただ、実際には紙の辞書や電子辞書を会話の途中で開くことはほとんどありませんでした。相手を目の前にしている時に、毎回辞書で調べる余裕はなかったからです。
当時、一番使っていたのはガイドブックと地図でした。行きたい場所を指さしたり、今いる場所を確認したりしながら、巻末にある必須表現も確認のために使っていました。
ただ、実際の会話は、それだけで完結するものではありません。相手が言い直してくれた言葉、道を教えてくれる時の表現、聞き返した時の返事など、その場で交わされるやり取りの中に学びがありました。
ま~ささん教材というより、旅の中で出会う人の言葉や、その場のやり取りそのものが、私にとっての教材でした。
やってみた結果
この方法を続けて一番変わったのは、英語を「勉強するもの」ではなく「使うもの」と思えるようになったことです。
始める前の私は、正しい文法で話さなければいけないと思っていました。間違えたら恥ずかしい。聞き取れなかったらどうしよう。変な英語だと思われたらどうしよう。そんなことばかり考えていました。
でも旅を続けるうちに、考え方が変わりました。完璧な文章でなくても、伝わることはある。単語だけでも、表情やジェスチャーでも、地図を指すだけでも、相手に伝えようとすることはできます。
ま~ささん大切なのは、正解を出すことではなく、目の前にいる相手とやり取りを続けること。
特に印象に残っているのが、カナダに渡って1か月半ほど経った頃の出来事です。バンクーバーからシアトルへ移動し、そこからアラスカのフェアバンクスへオーロラを見に行く予定でした。
ところが出発前日の夕方、翌日乗るはずだった飛行機がキャンセルになったと連絡が入りました。次にどの便に乗れるかわからないので、できれば今すぐシアトルへ向かってほしいとのこと。
その時点で夕方5時頃。シアトル行きのバスは6時。荷造りもまだできていません。
一瞬、頭が真っ白になりました。でも、止まっていても何も進みません。ホストマザーに状況を伝えると、すぐにタクシーを手配してくれました。
タクシーが来るまでの間に、スーツケースへ荷物を詰め込む。小さなりんごを2つ紙袋に入れる。最低限の確認だけして、タクシーに飛び乗る。
ダウンタウンに着いた時、バスはちょうど出るところでした。必死で駆け寄り、なんとか乗り込むことができました。
バスに乗り込んでようやくホッとすると、安堵とともに笑顔が込み上げました。
でも、しばらくして急に不安が押し寄せました。
ま~ささんそういえば私、今日泊まるところがない
シアトル到着は夜中。当時はスマホで宿を検索して、その場で予約することもできません。頼れるのは、自分の英語と、その場で出会う人だけでした。
到着後、私は運転手さんに必死で伝えました。
ま~ささん今夜泊まるところがない
すると幸い、目の前に宿泊施設があり、「ここに泊まれるよ」と教えてもらえました。
翌朝はタクシーを手配してもらい、空港へ。カウンターでは、乗るはずだった便がキャンセルになったこと、今日中にフェアバンクスへ行きたいこと、どうしたらいいのか知りたいことを説明しました。
しどろもどろでも、伝えるしかありませんでした。
この時に学んだのは、英語が上手いから先に進めるのではないということです。伝えようとするから、先に進める。完璧な英語でなくても、困っていることを伝えれば、助けてくれる人はいます。
旅を通してこうした経験を繰り返すうちに、うまく話せなくても、黙っていたら何も変わらないと感じるようになりました。
間違えても、聞き返しても、とにかく自分から言葉にしてみる。その感覚が、少しずつ自分の中に残っていきました。
その後、私はカナダ大陸を1か月半ほどかけて横断し、モントリオールを拠点に過ごしました。ニューヨークにも何度か行き、さらにパリへ飛んで、ヨーロッパを約3か月周遊しました。
そのうち約1か月半は、ロンドンで合流した英語圏の若者たちと一緒に17か国をまわりました。最初は会話のスピードについていけず、聞き役になることも多かったです。
ま~ささんみんなが笑っているのに、私だけ何がおもしろいのかわからない。その場にいるのに、会話の外側にいるような感覚がありました。
それでも、その旅で必要だったのは、やはり完璧な英語ではありませんでした。一緒に移動し、食事をし、寝泊まりをする中で、わからない時は聞き返す。
短くても自分の意見を言う。相手の言い方をまねる。同じ表現を、次の場面で使ってみる。
ま~ささんその繰り返しの中で、「全部わからなくても会話には入れる」と思えるようになりました。
ヨーロッパ周遊後、モントリオールへ戻り、その後一時帰国の途中でバンクーバーに寄った時、以前同じESLに通っていた友人の家に泊めてもらいました。その友人に会ってすぐに言われたのが、「なんでそんなに英語が話せるようになったの?」という言葉でした。
さらに、その友人から「寝言が英語になっていたよ」と言われました。それを聞いた時、ようやく私の中で、英語が生活の中に入り込んでいたのだと実感しました。
あれから25年以上たちますが、当時出会った海外の友人たちとは、今でもつながっている人たちがたくさんいます。
英語は、ただ当時の旅を乗り切るためだけの道具ではありませんでした。私にとって、何十年も続く人とのつながりを作ってくれたものでもあります。
実際にやってみてよかった点・悪かった点
よかった点
よかった点は、英語を話す度胸がついたことです。
日本で勉強していた時は、「間違えたらどうしよう」と考えすぎて、なかなか口から英語が出ませんでした。でも海外では、話さないと次に進めない場面がたくさんあります。
道を聞かなければ、目的地に着けません。予約を確認できなければ、泊まる場所にも困ります。自分の希望を言わなければ、相手には伝わりません。だから、話すしかない。この「話すしかない」という環境が、私には合っていました。
ま~ささん特によかったのは、聞き返すことへの抵抗がなくなったことです。
相手の言葉が聞き取れなかった時。意味がわからなかった時。もう一度言ってほしい時。最初はそれを口にするだけでも勇気がいりました。
でも何度も経験するうちに、聞き取れないことは恥ずかしいことではないとわかりました。むしろ、わかったふりをする方が危ないし、あとで困ります。
日本人は、会話を止めることに遠慮しがちです。でも、海外の人はわからない時にちゃんと止めます。最初はドキッとしました。でも、それは失礼ではなく、会話を続けるために必要なことでした。
空港で使った英語、宿探しで使った英語、道に迷った時に聞いた表現は、ただ単語帳で覚えた言葉よりもずっと記憶に残りました。焦った時、困った時、恥ずかしかった時の英語ほど、忘れません。
悪かった点
一方で、悪かった点もあります。
この方法は、体力とメンタルをかなり使います。毎日が実践です。聞き取れない。伝わらない。相手の反応がわからない。その連続です。最初はとても疲れます。
また、実践だけに頼ると、間違った表現がそのままクセになることもあります。度胸や会話の瞬発力はつきますが、文法や発音を正確に整えるには、あとから確認する学習も必要です。
ま~ささん今、英会話講師として教える立場になって思うのは、「使う経験」と「整理する学習」の両方が大切だということです。
実践で使い、あとで確認する。その両方があって、英語は少しずつ自分のものになっていくと感じています。
意味がなかった・失敗した学習法
私にとってあまり意味がなかったのは、「使う場面を考えない丸暗記」です。
単語や文法を覚えること自体は大切です。でも、ただ単語帳を眺めるだけ、きれいにノートをまとめるだけでは、実際の会話でなかなか口から出てきませんでした。
覚えたはずなのに、使えない。知っているのに、言えない。見ればわかるのに、聞くとわからない。そんな状態でした。
ま~ささん一番の失敗は、「間違えないように話そう」としすぎたことです。
頭の中で文法を組み立てているうちに、会話のタイミングを逃してしまう。言おうと思った時には、もう話題が変わっている。完璧な英語を話そうとすればするほど、逆に何も言えなくなりました。
でも会話は、テストではありません。正解を出す場ではなく、相手とやり取りする場です。少し間違えてもいいから言う。短くてもいいから返す。わからなければ聞き返す。その方が、会話は続きます。
ま~ささんまた、聞き取れなかった時に笑ってごまかすのもよくありませんでした。
相手に悪いと思って、わかったふりをする。すると、結局あとで自分が困ります。何をするのか、どこへ行くのか、何を頼まれているのか。わからないまま進んでしまうからです。それは結果的に、相手にも失礼になってしまうことがあると感じました。
海外では、日本のように「察してもらう」ことはほとんど通用しません。自分が何をしたいのか。何が嫌なのか。何に困っているのか。どうしてほしいのか。きちんと言葉にする必要があります。
私にとってこの実践学習で一番大きかったのは、単語を増やすこと以上に、自分の意思を言葉にする練習だったと思います。
便利なアプリ・ツール
今なら、英語学習や海外での実践に使える便利なツールはたくさんあります。
Google翻訳
たとえば、Google翻訳は、どうしても言葉が出てこない時の確認に役立ちます。Googleマップは、目的地までの行き方を調べるだけでなく、地名や駅名を相手に見せながら説明する時にも便利です。
YouTube
YouTubeは、現地の発音や自然な会話表現に触れるのに使えます。英会話アプリや音声入力も、自分の発音がどのくらい伝わるのかを確認する練習になります。
ただ、便利なツールがあるからこそ、頼りきらないことも大切だと思います。最初から全部翻訳アプリに任せるのではなく、まずは自分の言葉で言ってみる。通じなかったらアプリで確認する。相手の言い方を聞いて、次にまねしてみる。
ツールは、英語を話す代わりに使うものではなく、自分で伝える力を助けてくれる補助として使う方が、実践力につながると思います。
初心者の自分にアドバイスするなら
初心者の自分に伝えるなら、まずこれです。
完璧な英語を話そうとしなくていい。
短い言葉で大丈夫。
このような聞き返す英語を持っているだけで、会話は止まりません。わからないことは恥ずかしいことではありません。聞き返せばいいだけです。
そして、英語は間違えた場面ほど記憶に残ります。道に迷った時。注文を間違えた時。宿が見つからず焦った時。飛行機のトラブルで必死になった時。自分の条件を伝えなければいけなかった時。その時に使った英語は、忘れません。
ま~ささんきれいにノートにまとめた言葉より、「あの時これが言いたかった」と悔しくなった言葉の方が、自分の中に残ります。
もう一つ伝えたいのは、英語は自分を守るための道具にもなるということです。
Noと言う。条件を確認する。困っていると伝える。助けてほしいと言う。自分の希望を言う。これらは、海外で自分らしく動くためにとても大切でした。
旅に出なくても、今ならオンライン英会話や英語チャット、海外の人との交流など、実践の場は作れます。大切なのは、英語を頭の中だけで終わらせないことです。
だからこそ、怖がらずにまず一言、声に出してみること。間違えても大丈夫。聞き返しても大丈夫。言い直しても大丈夫。
間違えたことも、聞き返したことも、必死で伝えようとした経験も、 その一つひとつが自分の生きた英語になっていきます。

